猪突猛進ハリネズミ - 私空模様。ー7話ー
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私空模様。ー7話ー 

盛夏4




屋台から少し離れた交差点で行き交う人の合間を塗って見知った顔の元へと歩く。
「よう、隆也。夏祭りといえど早いな」
声をかけると例年と同じく浴衣を着た隆也がこちらに気付いた。
「待ち合わせに遅れるの嫌なんだよ」
「本当は楽しみなくせに」
からかうように返せば、隆也はムッと不機嫌そうな顔をする。
言い返したいけど間違いではないので否定できないでいる素直な隆也をからかうのは面白い。
「……花音ちゃんとはうまくいってるのか?」
「お、おう。おかげさまでな」
単に話題を変えたかっただろう隆也の言葉が唐突で、ついどもってしまった。
隆也の視線が探るようなものへと変わる。
「何かあったのか……?」
こうなれば変に誤魔化そうとしてもバレるのは知っている。
「花音ちゃんがたまに寂しそうな顔をするんだ……理由は何となく分かってるというか、たぶんおれのせいなんだけど……」
言いながら花音ちゃんの寂しげな視線を思い出して、いたたまれなくなり顔を手で覆う。
「理由が分かってるなら何とかしてあげられないのか?」
「何とかしてあげたいんだけど、難しいというか……」
煮え切らないおれの返事に隆也が不思議そうな顔をする。
「おれが……花音ちゃんに触れないようにしてるから、寂しがらせてるんだと思う」
「は?」
何言ってんだこいつとでも言いたげな視線が痛い。
「そりゃおれだって触れたいと思ってるけどな?触れたら歯止めが利かなくなりそうで……怖がるようなことしたくないしさ……」
嫌われたらと想像すると気持ちが沈んだが、そんなのは関係なさそうに隆也が口を開く。
「いや、そこはお前がセーブしろよ」
容赦のないツッコミは逃げようとしているおれの心にグサリと突き刺さった。
「口では簡単に言えるかもしれないけどな、実際そう簡単にできるもんじゃないんだって」
「そんなことは実際にやってから言え」
隆也の言葉に何も言い返せなくて、言葉に詰まる。
そんなおれを見て隆也は呆れたように溜息をついた。
「お前は花音ちゃんの為と言い訳して、結局自分が傷つくかもしれないのが怖いだけだろう。花音ちゃんを本当に大切にしたいなら、やり方間違えんな」
「……あぁ」
隆也に叱られて間違いに初めて気付いた自分が情けなくて、頭をクシャクシャと掻いた。
「ごめん」
謝ると隆也の表情が柔らかくなった。
「いや、俺はお前らに上手くやっていってほしいだけだから」
「なんかいつもありがとな。これからは俺たちが応援するから」
そう言うと隆也の表情がまた険しくなる。
「………余計なことはしなくていいからな」
「余計なこととか、寂しいこというなよ」
隆也は何か反論しようと口を開けて、結局何も言わずに閉じる。
その様子を不思議に思っていると、カランカランとこちらに向かってくる下駄の音に気が付いた。
「ごめん!遅れた!」
早足でおれたちの元へと来た京子さんと花音ちゃんは去年とは違う浴衣で、普段しない化粧をしていて、思わず目を見張る。
「ほんとにごめんなさい」
何も言葉を返さなかったおれたちが怒っているとでも勘違いしたのか、花音ちゃんが頭を下げた。
「や、だ、大丈夫だよ」
そう言えば花音ちゃんは安心したように微笑んで、おれはその笑顔から目を逸らせなくなる。
そんなおれを見て、京子さんがニヤニヤと笑う。
「ふふふふ。雪さん、花音ちゃんに見惚れちゃってる」
「いや!そんなことな……くはない、けど」
からかい口調に思わず否定しそうになったが、恥ずかしさを堪えて肯定すると、花音ちゃんは赤く染まった顔を隠すように俯く。
「ほんとに可愛い」
思うよりも先に言葉が零れていた。
花音ちゃんが恥ずかしげに上目遣いでおれを見上げる。
そんなおれたちを見ていた京子さんが呆れたようにため気をついた。
「はいはい。惚気ごちそうさま」
その言葉で二人の世界に入っていたことに気付き、おれたちの顔は真っ赤に染まる。
そんなことは気にもせず、京子さんは会ってから一言も話さない隆也へと視線を向けた。
「隆也が何も言わないなんてどうしたの?」
そう話しかけられて隆也が気まずそうに視線を逸らす。
その反応が気に入らなかったのか、京子さんは眉をひそめる。
「あぁ、許してあげて。きっと京子さんに見惚れてるんだよ」
「雪!違う!」
おれが説明すると隆也が噛み付くように否定する。
「そーだよ。隆也があたしに見惚れるわけないじゃん」
なぜそんなことを言ったのかと不思議そうな顔をして京子さんも否定した。
隆也のこういう不器用なところが意識されない理由ではないかとおれは苦笑する。
「でも私なんかより京子さんこそ浴衣似合ってますし、化粧も髪型も可愛いから見惚れちゃっても仕方ないですよね」
「……そんなことないっ!」
花音ちゃんが出した助け舟にも隆也は乗らず、全力で否定する。
「そこまで全否定されると逆にムカつくな……まぁ、いいけど」
隆也からの良いコメントは最初から期待してないと京子さんは隆也から顔を逸らしたところで、おれが一度手を叩く。
「はいはい。みんな揃ったし、そろそろ行くぞー」
そう言って先頭切って歩き出せば、みんなも歩き始める。
おれは一人で前途多難だと苦笑をこぼした。


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