猪突猛進ハリネズミ - 私空模様。-4話-
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私空模様。-4話- 

盛夏1




梅雨のとある雨の日。
隆也さんと京子さんが世話焼いてくれて、雪さんと私は付き合うことになった。

それから一ヶ月が過ぎようとしていた日の休み時間。
次の授業がある教室へと移動しながら、私は隣にいる雪さんへ話しかけた。
「二人へのお礼……何をしたら喜んでくれるんでしょうね……」
それは私と雪さんで前々から思っている悩みごとだった。
「そこがイマイチ分かんないんだよな…」
雪さんはポリポリと頭の後ろを掻く。
二人で唸り声を出して、京子さんと隆也さんが欲しいと言っていたものなどの記憶を遡ってはみるけれど、これというものは思いつかない。
「あの二人、自分が欲しいものとか自分で手に入れますからね……」
言いながら思わず苦笑が漏れる。
それは雪さんも同じで。
「むしろ自分で手に入れることに意義があるみたいな考え方がするからな。下手に手伝えないんだよなー」
発する言葉に少しだけもどかしくなる気持ちが滲んでいた。
「努力家でとてもいいことなんですけどね」
むしろ尊敬さえしている部分ではあるのだけれど、側で見ていると頼られない寂しさを感じたりする。
(まぁ、私にはそんなことを本人たちに言う勇気なんてないけれど)
少し自分嫌悪に陥りそうになった時、雪さんが「あっ」と何か思いついたような声を上げた。
そっと雪さんの顔を見やれば、少し言いづらそうに躊躇ってから口を開く。
「……二人が自分だけじゃ手に入れれないものが、有るっちゃ有るんだけども」
「何ですか?」
私が訊ねると、雪さんは少し言葉を選んでいる様子で続きの言葉を発していく。
「あー、隆也さ……自覚してないだけで、京子さんのことが好きなんだと思うんだよ」
「えっ!本当ですか!?」
想像していなかった雪さんの言葉に思わず、大きな声が出てしまう。
「前に京子さんのこと守りたいみたいなことを言ってたんだ」
話を聞いてるだけなのに、顔が熱を持ち始めた。
好きな女性を守りたい、それはなんて素敵な思いなんだろうか。
「なんだか、こっちが恥ずかしくなってきました」
火照った頬を手のひらで包めば、ひんやりとした感覚が心地よい。
「だろ?そんな恥ずかしいこと言ってる割りに自覚ないんだよ。はっきり言って焦れったくてさー……」
そう言いながら少しムスッとした雪さんに、私の欲が少し顔を出す。
「ぁ」
「あぁ、でも最近はちょっと京子さんを意識してるみたいなんだよな」
私の小さな声が雪さんの声にかき消されたことで、思ったままの欲を口にしそうになったことに気付き、口を手で覆う。
もし声が被ってなかったらと思うと血の気が引いていく。
「花音ちゃん?」
そんな私の様子に雪さんが首を傾げた。
「あ、あの二人が付き合ってくれたら良いなぁって思ってはいましたけど、私が気づかないうちにそんな話になってたんですね!」
少し強引に話を戻せば、雪さんは優しく微笑む。
「おれもくっついて欲しいと思ってた。だからあの二人がおれらをくっつけてくれたように、おれたちもくっつけてあげたいなと思うんだ」
何も聞かずに元の話に戻ってくれたことに、私は内心ホッとした。
「ただそのためには京子さんの気持ちが分からないと手がだせないんだよなぁ」
そう言って雪さんはまた唸り始める。
「あ、隆也さんが好きだとしても京子さんが違うかったらただの有難迷惑ですもんね」
「そうそう。花音ちゃんは京子さんの恋バナとか聞いたことないの?」
雪さんに問われて、京子さんとの話す恋愛相談を思い返すけれど、思い出せるのは全て私の相談ばかり。
「そういえばその、わ、私のことを、話すことがあっても京子さんのことを話したことない気がします……」
私の恋愛相談なんて相手は当然、雪さんなわけで。
本人に明かすのは少し照れくさかった。
「そ、そっか」
雪さんにも少し私の恥ずかしさが移ったのか、少し赤く染まった頬を指で掻いていた。
少しの沈黙の後、私は言いながら拳をグッと握りしめる。
「………私ちょっと頑張って京子さんに聞いてみます」
「お、やってくれるの?」
決意を込めて言った言葉に雪さんは少し嬉しそうな声で聞いてくる。
「はい、私ができることがあるならやりたいですし」
それが京子さんの為になるのなら尚更、頑張りたいと思えるから。
そんな私の気持ちを察してか、雪さんは優しく応援するように私の頭をポンポンと叩いた。
「それじゃよろしくお願いしようかな」
優しい瞳で笑う彼と、その温かい手に、身体が沸騰したかのように熱くなる。
「…頑張ります」
思わず小さくなってしまった声で、真っ赤に染まっているであろう私の顔に気付いたのか、雪さんがバッと手を離してしまう。
「あ、っ、ごめん!」
慌てて謝って、私の一歩前を歩き出した彼の
背中に一抹の寂しさを感じてしまう。
きっと、大切にされているのだと頭では分かっていても、気持ちはそう簡単に納得してくれない。
「……雪さんは私のことを守りたいって、そんな風に思ってくれますか?」
誰にも気付かれないような、小さな小さな私の欲は風に乗って消えていった。


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